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押す時間も、引く時間も惜しいから、とりあえず、、
メタルキル
「……デスサイス、『鋼殺し』」
縦横無尽に背中の大鎌を振り回す。
『鋼殺し』と呼ばれる斬撃は、まるで分厚そうな鉄を粘土のように呆気無く切り裂いた。
文字通り、『鋼殺し』だ。
直後、扉の向こうから、カサカサという風の通る音と共に、金色の風が飛んできた。
薄の葉っぱだ。
扉の向こう側――そこに広がっていたのは、埃にまみれた部屋ではなく、たくさんの薄が生えた原っぱだった。
「……あ?」
「有り得ない光景ね……」
呆然と立ち尽くす咎菜に代わって、灰道が言った。しかし、流石の彼女でも全く驚いていない訳ではないようだった。
有り得ない。もしも、ここが本当に研究施設で、薄の研究をしていて、無人になった後、野生と化した薄がここまで繁殖した、という可能性が万に一つも無くはないが……。
「流石に空までは無理だろ……」
上を向いた咎菜が言った。
完全に景色が切り替わることは、精神的にはともかく、物理的に不可能だ。
風の通りが良い。
(本当に外か……?)
一応、デスサイスを思いっきり上空まで投げ飛ばした。
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