とある母の日の出来事《エピソード》

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「なんで起こしに来てくんなかったんだよっ!!!」  キッチンにて、お弁当に野菜や冷凍食品類を詰め、並行して卵焼きを作る私の背後から、そんな乱暴な声が投げられた。 「昨日言ってたじゃん! 今日部活早いってさ! それがこの時間て……もはや遅刻間際じゃんよ!!」  責め立てるように、ボサボサの髪を揺らしながら荒げる息子。顔もご立腹の様子を十分すぎるほどに表現していた。寝起きだからか、相当気が立っているようだ。  だけど、 「うっさいわね……。人に起こしてもらうこと前提に物考えてんじゃないわよ。早起きするならするで自分で起きる努力をしなさい」  もういい歳なんだから、と続けて私は呟いた。  寝起きで気分が悪いのは私も一緒だ。昨日は朝から晩までパートの仕事に励み、その中で夫が夜遅くまでビールに耽って和みやがったせいで就寝も三時を回っていた。  そんな時間までお酒を呑んでるくせに、風呂やつまみの皿を洗わないのだから性質(たち)が悪い。  昨日の分のイライラも加算されて、今日の寝起きテンションは日ごろの中でもすこぶる悪いのだ。  そんな私の苦労も知らない高校二年にもなる息子は、私の言葉に眉間へしわを寄せ集め、 「は? なにそれ? 言い訳? 起きられなかったのは俺もだけど母さんもじゃん。自分の事棚に上げんなよ!」  これまた生意気な小僧だ。そんな風に育てた覚えはないぞ、と言いたい。 「棚上げ? それはあんたもじゃないの! しかも母親に向かってそんな口の利き方して、そんな風に育てたおぼ――――」 「いいからさっさと飯作って」  言おうとしたけど強制シャットアウトされました。  そんな事言われなくても作ってますよ! 卵焼きは強火でガンガン焼けばいいってわけじゃないんです! この母の些細な配慮と技術に気付いて! 「なんだ? 朝から険悪なムードガンガンだな」  食卓で新聞紙を広げ、だんまりを決めていた夫がここで会話に割り込む。  他人事感が半端の無いセリフ。というか、今思えば…… 「あなた……いつからそこに?」 「…………六時辺りか?」  私は心底思った。  アイツに言えぇぇーーーッッ!! と。
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