番外編

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ある時彼は料理をしようと思い立った。 母の作る料理は美味しい。 それを見てきた自分にも同じ物は作れる、と。 彼は火を付けた。 彼はそれが赤くて熱いと知らなかった。 いつか見た『紅の液体』を思い出した彼は、同じ色に恐怖した。 怯えて動けない彼の周りを、その木造の家を、火は勢いを増し、包み込んだ。 彼はよく覚えていなかった。 火は鎮火されていた。 母は自分の上に倒れていた。 母の服は焼け焦げていた。 その姿は、その皮膚は、見るに耐えないものだった。
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