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ある時彼は獣にあった。
彼はそれが危険だと知らなかった。
獣の口回りには返り血が付いていた。
彼はそれを獣の物だと思い込んだ。
彼は獣を抱き締めた。
『お前も怖かったろう?』と慰めた。
獣に思いは届かなかった。
獣は彼に牙を向いた。
気が付いたら獣は冷たくなって動かなかった。
それは、狩人に撃たれて息絶えた。
彼は母の最期を思い出した。
彼は自分の肩を伝う『紅の液体』に気が付いた。
『痛い』事に気が付いた。
『殺してもいいのだ』と思い込んだ。
獣の目は赤かった。
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