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「七瀬…家賃気にしなくてイイから、この前のデザイナーズマンションにしよう」
俺がそう言うと、七瀬はとても申し訳なさそうな顔をしてから、
「せっかく圭悟くんがそう言ってくれているのに、ごめんね。でもね?このマンションなら、圭悟くん早く帰って来れるし、朝もギリギリまで一緒に居られるんだよ?
だから、私……ここがイイ。ダメ?」
と、言ったんだ。
何なんだ、その破壊力のある上目遣いは…。
……ちくしょう、アホだ、俺は。
ここが不動産屋なのに、目の前にいる七瀬を抱きしめたい衝動に駆られる自分にほどほど呆れ、ぐっとそうしたい欲を抑える。
その代わりに、七瀬の髪にそっと触れてから「じゃあ。そうしよう」と答える。
マンション契約時のやりとりを、思い出しながら、車はあっという間にマンションへ到着。
駐車場に車を停めて、優しい光が灯る4階の角部屋に視線を移し、心から思う。
ーーーー 今となれば……
七瀬の言う通り、事務所から近いここを選んで本当に良かったと。
おかげで、早くお前に会える……
そう思いながら、4階までの階段を上がりながら、自分のアホさに苦笑いした。
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