上から読んでも、下から読んでも

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ほとんどの者が、皆が苗字で呼び合う中。 大和だけは、名前で呼ばれている。 その理由は、私達の同期に『高橋』が2人いたからだ。 新入社員研修終了時に、同期で集まった打ち上げと称した飲み会で、大和が言った。 「『イケてる高橋』と『イケてない高橋』って呼ぶのは、あいつが可哀想だから。 だから、俺のことは名前で呼べよ」 こんな台詞…… 普通に考えたら、 背後から刺されてもおかしくないほどの、嫌味な奴なのに。 大和のこの台詞は、まだ出会って間もなかった私達を何故か深く納得させた。 堂々とした立ち振る舞い、豊富な知識を元に、どの新入社員よりも講師に多く質問をして、論議を繰り広げていた。 “只者ではない” 皆がそういう目で見ることに、何の違和感もないほど、大和は存在感をアピールしていた。 それにね? 『イケてない高橋』と言われた彼も。 「そうだな! それが良い!」なんて言うから。 この日を境に、 『イケてる高橋』は大和と呼び、 『イケてない高橋』は高橋と呼ぶことになったのだ。
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