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「で、それ先輩だったの?」 「……うん、多分」 「多分、て」 だってー、と言いながら机に突っ伏して まだ手付かずのランチボックスがゴトリと床に落ちた 「蓋、取れなくて良かったね」 「食べないの?」 「いらない……」 きっとあの場所に置き去りにしてきた スマホ そして、確実にあそこに居た事がバレてしまって ……もぅその後は考えたくない 何で学校で しかも、教室で あんなこと、するかなぁ 確かに、ゆう!と叫んだ女子 ゆう、で思い付く あんな事をする、ゆう、は一人しか居ないと思う 昨日もそんな感じで補導に至った訳だし…… 「とりあえず、電話掛けてみたら?」 「それがいいよね」 「どっか違う場所で落としたかもしれないしさ」 「はい、かけてみなよ」 葵があたしにスマホを渡してくれて 真悠子が背中をポンポンと叩いてくれて 「……」 だけど、掛ける勇気さえない 弱い人間なんですぅ ガックリと沈む私を見て 二人は大きくため息をついた 放課後になっても 意気消沈のままの私を 引っ張るように部室へ連れていく嶋口は 葵と真悠子から世話係を頼まれたらしく その責務をちゃんと果たしてくれている 「しまぐちぃ~」 プルプルと首を左右に振りながら 私は嶋口が進もうとしている反対の方向へ逃げようとする 「こら、安城、お前部活あんだろ! しっかりしろよ」 「今日はできないぃー」 「はぁ?今日練習試合だろ? M高じき来んぞ」 「しまぐちぃ~、ムリだぁ」 「お前ねぇ」 行きあぐねている私の腕を一度離して 正面に向き直った嶋口は私に言う 「ここでバスケしたくてワザワザS学園の推薦蹴って入ったんだろ?安城」 「え……」 嶋口はチラリと視線を逸らす 「幸いさ、S学園程の全国レベルじゃないにしろ、うちも来年くらいからは高いとこ、目指せそうじゃね?」 嶋口の言いたい事はよく、分かる 「だから、毎日朝昼晩、やってる練習無駄にすんの止めようぜ」 ニカっと笑った 嶋口のキラキラの瞳と白い歯が凄く眩しくて 「し、嶋口、ちょっとカッコよく見える……」 「今頃気付いたのかよ!おせーよ!」 歩き始めた時は、自分で歩いていた 嶋口の隣に並んで そうだった 先輩のバスケが見たくて追いかけてきた S高 だけど、それ以前にバスケが好きだから バスケ部に入ったんだ
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