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「すいませんでしたっ!」 ひと声張り上げて また、アップに戻る だけど、私の乱れた心拍数は元には戻ってくれない 所謂(いわゆる)ギャラリーと呼ばれるところにもう一度視線を飛ばすと この体育館の空気を瞬時にかき混ぜた 諸悪の根元、いや、人物が…… 何をまかり間違えたか 女バスコート側のそこに腰を下ろした 男バス側はまだ、少しざわついていて これだけでも、 きっと、何かあったんだ、と匂わせるような立ち回りだった 先輩の一人が私に声を掛ける 「エリー、平気?」 「はい、大丈夫です!」 ちっとも大丈夫なんかじゃないのに 口をついて出たのは驚くほど元気イッパイなソレ 「そ、よかった」 それ以降 ギャラリーに視線を飛ばす勇気が無くて 必死でコートばかり見つめていた M高が到着しても 体と心がチグハグで なんだか地に足が着いていない感じ こんなんで練習できるんだろうか なのに ハンドリングはいつもよりもアクロバティックで ボールコントロールも冴え渡っていた 佐波は 「やっぱ憧れの先輩のパワーは違うわ」 と、冷やかしをコソリと言う始末 そんな訳ない こんなのは私じゃ無い…… そう思うんだけど、思いの外カラダは軽くて 「エリー、今日は一段と凄いね」 「……やっぱ、アレの影響?」 バスケ部のみんなは 私が柏木先輩に憧れて入ってきた事実を知っている 私が男女を問わずしつこく、先輩の所在について聞いたからだ だから、きっと今さっきの罰周だって無くなったんだ 私の異常な程の先輩のバスケに拘る様子をずっと見てきたキャプテンの配慮だ だからと言って 今の感覚は嬉しいのとは大分違う どちらかというと、浮き足だっていて だけど それを裏切るくらいにカラダを支配する バスケをこよなく愛する血 なに、これ 自分でも考えられないくらいの ハイテンション ドーピング ドーピングだ
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