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「せ、先輩っ、離してください」
今、先輩、な、なんて言ったの??
顔が熱い
きっと、今死ぬほど赤いだろう頬を隠そうと、顔を背けた
「お前、今オレとの勝負に負けただろ」
「そ、それとこれとは、関係な」
「なくねーよ」
私が言い終わらないうちに
先輩は否定する
「後輩、オレがバスケ辞めた理由、聞きたかったんだろ?」
「へ」
「教えてやるよ」
「……え」
「オレを抜けたらな」
…………は?
「じゃあ、とりあえず、今の勝負はオレの勝ちだから」
「あ、あの、」
「キスぐらいしとくか」
「はっ!?」
先輩の考えてる事が分かりません、全っ然分かんないっ
手首を掴んでいる先輩の手を反対側の手で離そうとした
考えても分かるはず、男子の力なんかに
かなう訳ない
「バカだな、後輩」
そう言った柏木先輩は
私の両手首を片手で掴んだ
バスケットボールを片手で掴めるような人だもん、ボールなんかより面積の狭い私の腕なんて、纏めてしまうのは簡単な事だ
「先輩……は、離してください」
私はさっきから、離してください、としか言ってないな
なんて、そんな呑気な事を考えていた
「キスぐらいするだろ、普通」
「……し、しません!」
先輩のおっきな掌が
迫ってくる
……に、逃げなきゃ……!
逃げるって、どうやって?
「先輩、お、落ち着いて!」
「オレはいたって落ち着いてる」
頬に添えられた先輩の掌が
私の流れ落ちる汗を拭う
「せ」
「黙って」
いや、だ、黙ってられない!
「先輩!先輩と、キスなんかしたくないっ!」
ブルブルっと掌を振り払うように首を左右に振る
「私は、先輩とキスしても、う、嬉しくありませんっ!」
唇が出ないように
『んっ』と口を結ぶ
そして、んーんーと唸りながら両手を捩った
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