20/24
8806人が本棚に入れています
本棚に追加
/512ページ
「撤収するぞ、後輩」 後輩って名前 「……じゃ、ないし……」 モゴモゴと口の中で呟いて 「また明日、勝負してやるよ」 バッと顔をあげると また、ゾワっと全身を駆け巡る 先輩の妖しくも、綺麗な微笑みに 私の毛穴が逆立つこと、逆立つこと 「ホラ、早く用意しろよ」 先輩は私を促して 私はボールを拾い上げた 自転車を押して、公園の入り口まで一緒に歩く 「お前、ちっこいのな」 「へ?」 「もっとデカく見えた」 「わ、わたしが小さいんじゃなくて、先輩がデカ過ぎるんじゃ……」 「あー、高校入って伸びたからな」 「……」 恵まれた体格で こんなにセンスがある人が どうしてバスケ部に居ないの? ねぇ、先輩 何が、何が 「あったんですか……」 呟いた言葉は確実に先輩に聞こえた筈なのに、その後に続く答えは無かった 「じゃあな、後輩 気をつけて帰れよ、一応女なんだから」 「大丈夫です!爆走しますから!」 私は自転車に跨がって 「先輩、お疲れ様でした 有り難うございました」 頭を下げる 「またな」 そう言って あたしの左手に自分の手を重ねてハンドルを握った 左頬に近づいた先輩は そこに唇をピタリとくっ付けてから離れていく 「え」 「今日はこれでヨシとしてやるよ」 ニヤリと笑って、じゃな、と言い残し走り去った 「え……」 えぇっ!? 「えーーーーーーー!!!」 頬っぺたに チューされたっ 瞬間に沸騰する免疫のない体 こんなに男子と接近するなんて、ホントに今日という日はどうなってるんだ… 私は火照った体を冷やすべく 猛スピードで坂道を下った
/512ページ

最初のコメントを投稿しよう!