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「賢兄、何しに来たの??」 「賢吾くんは、これ、届けに来てくれたのよ」 お母さんが私のご飯をテーブルに用意しながら指差した先 「アップルパイ!」 キラリン、と効果音が鳴ったに違いない! 私の目に写るアップルパイの御姿のなんと神々しい事か! 「賢兄~、ナイス! おばちゃんから??」 「あー、そぅエリーの大好物だもんな、ソレ」 「きゃ~ん、好きよ好き! 大好き!」 私と言えばアップルパイ、アップルパイと言えば私 くらいに大好きなアップルパイ しかも、リンゴのスライスされたアップルパイじゃなくて リンゴがクラッシュされてジャム状になった物でないと頂けない 賢兄のお母さんは、スイーツが大得意で 昔からよく作ってくれた 「エリー、お前、ゲンキンだなぁ」 ん? そのセリフも今日確か言われたなぁ だけどアップルパイの幸せを前にした私にはどうでもよかった これが、ゲンキンな証拠なんだけど 「そんなに好きなら母さんの娘にでもなれば?」 「えー?おばちゃんのー?」 「教えて貰えるし、作って貰えるし」 「だってー、おばちゃんの娘って事は 賢兄の妹でしょー? んー、考えるなぁ」 私はとにかく、アップルパイを早く頂きたくてご飯を急いで食べる始末 「妹じゃないよ」 「あはは、こんな妹いらないっしょ!」 そう言ってご飯を頬張る そんな私を見ながら賢兄はフーと大きく息を吐いた 「オレも食っていー?」 降って沸いたように武瑠がアップルパイに手を出す 「あー、ひゃけう、!!ううーい!」 「きったね、ねーちゃん! 何言ってっかわかんねーし!」 「こら、あんたたち!ほんとに、ごめんね、賢吾くん、この子達……」 「いいよ、おばさん、姉弟っていいよね」 「えー、武瑠なんて意地悪なだけだし!」 「ねーちゃんだって色気ないし!」 武瑠がアップルパイを頬張りながら言って 次いで賢兄に向き直る 「そんな遠回しじゃ分かんないよ、賢兄 ねーちゃん、バカだし」 それを聞いて、ブッと吹き出した賢兄 「はー?誰がバカだ、誰が!」 あのS高に受かった私になんて事を言うんだ、弟よ そして やっとアップルパイにありついた私 何にも知らないまま 美味しく平らげた
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