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柏木先輩と秘密の夜練が始まって一ヶ月 季節は夏へまっしぐら 先輩にちっとも敵わず 燃える闘魂はあれども、尽く(ことごとく)打ち砕かれ現在に至る 昼間は相変わらず、柏木先輩のちょっと卑猥な噂話を聞くばかりで 何故バスケをしないのかなんて そんな理由はサッパリ分からない 「後輩、お前カットしてからのリターンが遅すぎる」 「ハイッ……」 遅すぎるって…… じゃあドンだけ早くすれば?? 『ダンッ』 外れたシュート 先輩の大きな体がリバウンドを取る 「むやみに打つなよ ぜってー、入んない」 「……っ、すいません」 大きく肩で息をする だけど、少しも止まらないマンツーマン 体力は自信があった筈なのに この人の前では一切通じない 大きく息を吐いて、ボールを持ち直す 前に立ちはだかった壁 この光景はこれでもう何百回、ひょっとすると千回を越えてるかもしれない 「ほら、来てみ?」 挑発に乗らないように落ち着いて どうせ私の出来る事なんて やろうとする事なんて、バレてるんだ ドリブルを始めて 先輩の目をよく見た 仕掛けるな仕掛けるな 動くな、待って 先輩が一歩間を詰めて よし、もっと来い 一歩また詰めた 背中を向けるとピタリと張り付くディフェンスにちょっとドキリとして 私は自分と先輩の股の間にボールを転がして グイと半ターンで先輩を抜いた その時 有り得ない程のゲリラ豪雨 「えっ」 「あっぶねー」 雨の勢いでボールの勢いは止まり 私の計画は本当に水の泡に 「えーー!」 立ち尽くしていると グイと腕を引かれて、私は駐輪場の軒下に連れられた
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