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お母さんは武瑠を連れて おばさんと、箱根に行ったらしい 昨日、賢兄が私に今日の午後の予定を聞いたのはこの事だったんだ 「えー、お母さん、何も言ってなかった」 「あー、今朝お前急いでたんだろ? 言いそびれたって言ってた メールするって言ってたよ」 「あ」 そう言えば 今日は、一度もスマホを開いてない事に 今さら気付く うかれてたんだなぁ いや、緊張してたのか そして、度肝を抜かれる体験をして と、また考える度になんとも言えないような気分になる キューキューいう 私のどこかが 音を立てて、狭まる 「エリー」 「……なに?」 慌てて顔を上げると 賢兄とバッチリ視線が合って 何でもお見通しチックな慧眼(けいがん)が 空気を裂くようにして突き刺さる 何も言わない ただ、その射抜くような視線をよこすだけの時間が短いはずなのに やけに長く感じて、更に 呼吸が止まってる事に気付いて、さらに 苦しくなった 「明日、出かけるから」 「は?」 「問答無用、付き合え」 「……うん」 「よし、ほらもっと食えよ」 やっとの事で無酸素から解放された 情けない…… 大学時代を一人暮らしで駆け抜けた賢兄の作ったご飯は、思いの外美味しくて 私には到底真似できないと思った そんな賢兄はもう大手のIT関連の会社に就職が決まっているらしく 色々な準備の為に帰ってきていると 話してくれた 大人の男を全面に感じて ちょっと、ドキドキした ひょっとすると 私だけ、何も成長してないのかもしれない 考えて、少し寂しくなってしまうのは 何でかな……
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