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新聞で殆どの視線を隠しながら だけど、チラリとこちらを覗いてくるお父さん 私はレタスを一回取り出して 「付き合ってない!」 そう断言して、再度レタスを放り込んだ 恥ずかしさを追い払うように バリバリと噛み砕く、噛み砕く 咀嚼の音だけが空気中を舞う 「……ふーん、永吉(エイキチ)がそんなような事を賢吾に聞いてたから付き合ってるのかと思った」 永吉とは、賢兄のお父さんの名前 「おじさんが?賢兄に?」 「あー、結婚だなんだー、って」 「は、結婚? 私と?賢兄が……?ナイナイナイ」 笑いも織り交ぜて、独り突っ込みを披露したところで 紅茶をすする 「オレは娘はやらん!って言っといたけどな、ガハハハハハハハ」 「……は?……」 酔っ払いの戯言だろうに… やっぱり大人って、お酒が入るとうるさいうえに、思考回路も狂うみたい やだなぁ ま、反面教師で見習わないようにしよ 残りのトーストと紅茶を口に押し込んで キッチンで洗い物を済ませる 私だってこれくらいはするのだ 後は何にも出来ないけど…… 「賢兄何時とかって、言ってた?」 リビングを出る時にお父さんに尋ねてみたが、返事の代わりに左右に首を振る 私は部屋に帰って、昨日から一度も使用感のない冷たいスマホを取り出して 充電器に差し込んでから、指をスライドさせた 「げ」 メールと、ラインと、着信に アイコンが着いている 着信とメールはお母さんからだった ラインは葵と、真悠子と、部活チームかぁ そして、まだ未読のラインがひとつ そこに釘付けになって、 そして、目を疑った
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