不運

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いつもは本当にうるさいとだけ感じてた、ベルトを締めないとアラームを鳴らして騒ぐ車に乗っててよかったと思ったのは、車や、ぼくだけじゃなくてそこらじゅうが黒っぽい土砂や長い木の枝の下に埋もれていたから。 ベルトしてなかったら、外に投げ出されて生き埋めか……。 左側のドアのすぐ横にある岩の巨大さに愕然とする。 あんな岩や木に潰されて死んでたかもしれない。 時間はかかったけど、何とか車の中から這い出したぼくは、改めて周りの様子を見回して体を震わせた。 見渡す限り――何十メートルにも渡って山崩れが起きたらしい。 ぼくは岩石と木、大量の土砂と一緒に車ごと崖下に流されたんだとわかった。 さっき走っていた道はだいぶ上にある。もちろん大量の土砂に埋もれている。 「……」 さあさあという雨音しか聞こえてこない。 嘘のような静けさが怖い。 車の反対側へ回って、岩の傍に立つ。一部が車体にめり込んでいる。 こんな岩がぶつかってきて無傷なのは、奇跡だ……。
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