側近の誤算

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「大丈夫ですよ、魔王様。今代の勇者は貴女好みの美形ですよ。…ご覧になります?」 「む。確かに随分整った顔立ちをしているな…って、か、顔で釣ろうとしたってそうはいかんぞ!」 「東の大国の第一王子で、勇敢且つ聡明、誰にでも分け隔てなく接する好青年…らしいですよ?」 「………。」 魔王様が無言になりました。なかなか食いついてきているようです。 もうひと押しですかね。 「あと、何と言っても今回の勇者は歴代の勇者たちよりも遥かに強いらしいです。魔力も剣術の腕も桁違い。恐らく現存する人間たちの中で最も強い者と思われます。」 「……ほう。」 あ、今度は返事が返ってきました。 目を輝かせて私の方を見る魔王様。完全に乗っかって来たようです。 魔王様は美形と強い男に多大な興味を示されますからね。 今回の勇者はうってつけですね。 「調査によると、勇者率いる一行はすでに魔王城の近くまで来ているようです。どうなさいます?お会いしますか?」 「ま、まあ…一目見てから決めても遅くはなかろう。」 「はい、かしこまりました。」 「いや、会ってみるだけだからな!変な意味はないから!」 「ええ、分かっております。」 ふふ、そう言ったヒロインの心は八割方相手に傾いているのですよ、魔王様。 相変わらず単純で助かります。 さて、結界を少し弱めて勇者たちのパーティを待ちますかね。 私は恭しく礼をして、謁見の間を後にしました。 .
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