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生徒会の顧問、後藤先生が廊下で声をかけてきた。
「稲葉 雪兎(いなば ゆきと)」
「はい」
「今度、文化祭の事で会議があるから、委員に伝達するように」
「はい」
「知らない人になかなか話しかけられないコミュ症なのに、人に伝達なんて・・・」
もじもじしていると、こたクンが声をかけてくる。
「ゆき・・・どうした?」
「この人たちを今日、委員会に呼ぶように言われているんだけど・・・
声かけにくくて・・・知らない人ばっかだし」
「OK!おーい、前原と飯田・・・文化祭の実行委員だろ?実行委員みんなに、今日の三時、生徒会室に集まるように、招集掛けといてくれ」
「はーい」
「了解!」
こたクンはにっこり笑って「これでいいか?」って言う。
コクリと頷いた。いつも、あっという間に解決してくれる。すごく頼もしくて、カッコイイ。
こんなこと思ったら、気持ち悪いって言われるのかな。
クラスの女の子はこたクンが好きみたい。その気持ちはよく分かる。
カッコ良くて背も高くて、ちょっと不良な所もイイんだろうな。
女の子といえば、こたクンにはすぐ彼女が出来るけど、別れちゃうのも早い。飽きっぽいのかな?
クラスの女子に
「ねぇ、稲葉クン、雷文クンと仲良しだよね。雷文くんの好みの女の子ってどんな子か聞いてきてよ」
そんなこと頼まれちゃって・・・正直よく分からないんだ。
こたクンが連れてる子は、いつもタイプが違ってて、どんな子が好きなのか見当もつかない。
帰りはいつも一緒・・・家はお隣さん。
帰ると怖い顔のお兄さんたちが整列して
「お帰りなさい、若」
なんて深々と一斉に頭を下げる。
最初は怖かったけど、今は慣れた。
怖い顔だけど、結構優しい人たちばかりだ。
帰り路に女の子が聞いてた事を、ドキドキしながら聞いてみた。
何でドキドキするんだろう。
聞いてきたのは女の子たちなのに。
「あのね、こたクン・・・こたクンが好きな女の子ってどんな子なの?」
「何でそんな事聞くんだ?」
「だって・・・女の子達、こたクンが好きで・・・聞いてきてっていうんだもん」
急に顔が怖くなった・・・怒らせたのかな?
「なんでゆきにそんなこと聞かせるんだ?」
「僕たち、仲良しだからって・・・」
「仲良しねぇ~」
「えっ?違うの?僕、こたクンのこと仲良しだと思ってたのに・・・違った?」
涙が一粒溢れた。
何で涙が出るんだろう・・・仲良しだよね。
心の中で言いながら涙が出てくる。
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