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いつものように帰りになるとこたクンは声を掛けてきた。
「ゆき帰るぞ!」
「ぼ・・・僕、用事があるんだ。先帰ってて」
「大丈夫か?待ってようか」
「ううん、遅くなるから・・・ごめんね」
「そうか、でも遅くなりすぎたら呼べよ」
「うん」
甘えてばっかじゃ駄目だ。こたクン、僕が心配で彼女作んないのかな?
なんだか涙が零れてきた・・・僕が不甲斐ないばっかりに、ごめんね。
独りで今日は帰ることにしたのに早速道に迷った。
家までは込み入った住宅街の細かい道だらけ。ココかと思うと袋小路だったりする。
東西南北も分からなくなってきて泣きそうになってきた。
「ダメだ・・・僕ダメ人間だ・・・こたクン!」
辺りも日が暮れて来て街灯が点き始める。どうしよう、うちに帰れない。
『遅くなりすぎたら呼べよ』こたクンの声が頭にこだまする。
ココで頼っちゃだめだ・・・もっと頑張らなきゃ・・・。勇気を振り絞って前に進む。
でもまた行き止まり・・・ほとほと自分にあきれた。
どれだけに頼りきっていたか。
もう7時になった。家では大騒ぎになっているかな。
家に電話する。母さんが絶叫していた。
「雪兎どこいるの?」
「道に迷って・・・どこにいるかわからなくて」
「今日は雷文さんの子と一緒じゃないの?」
「うん」
「無責任よね!雪兎が方向音痴なの知ってて」
「こたクンが悪いんじゃないよ!僕が・・・僕が・・・・」
涙が溢れて来て声にならなくなった。僕が全部悪いのに、母さん!!こたクンの悪口やめて!携帯を切るとすぐ電話が鳴った。こたクンだ。
「もしもし・・・こたクン」
「何ですぐに電話してこないんだよ!今すぐ行くから」
うずくまって泣いてしまった。結局、僕は迷惑をかけただけだった。
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