第1話

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 ――眩しい。  鳴るものも鳴っていない。まだ朝じゃないはずだ……。  ふごふごと口ごもりながら俺は眩しさに負けてぬくぬくとして心地よい布団を抜け出さざるを得なかった。頭まですっぽりと毛布を掛けているというのに、この眩しさはいったいなんなんだ?  秋から冬への季節の変わり目の時期。衣替えもまだ完全に終わっていないから、少し薄手のパジャマにはつらい寒さが襲ってくる。ああ、今すぐにでも布団に出戻りたい。だが、そんな温い考えを消し飛ばすくらいに朝日が眩しかった。元からの眼の悪さに加えて、この光で俺の眼はまだ起動しない。目やにがまぶたに張り付き、そのわずかな隙間から光が差し込んでくるのだ。  ……一体、どういうことなのだろう?  俺は上を見た。明かり。うん。消えている。  俺は目の前のカーテンをもう一度見た。うん。閉まっている。  ……ああ、非常用の懐中電灯か。  俺はタンスの上に備え付けている懐中電灯に手を伸ばす。が、空振り。ぼやける上に眩しくて遠近感がつかめない。もう一度手を伸ばして今度こそ掴み取る。うん。異常なし。平常通り、消えている。  ……一体全体どういうことだ?  布団にくるまっているときよりも、輝きを増した光と手先をギシギシとさせる寒さのせいで最早目が覚めてしまった俺は、もう一度出戻るのを諦め、原因の追究に乗り出した。なにせ、こんなに眩しいのだ。二度寝なんざ、できやしない。  そう朝っぱらから決意した俺はメガネを求めて再びさまよう。    鳴るものも鳴っていない。そう。確かにまだ朝じゃなかった。俺はメガネを装着してなおも続く光の原因を探して格闘中。そして、ふと見やった現在時刻に驚愕している。  睡眠開始後四時間。  通称、丑三つ時。午前二時過ぎ。  ……さて、だれか説明願おうか。一体何なんだ?
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