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今日は大切なプレゼンがあるんだ。抜かすわけにはいかない。俺のプロジェクトだ。必ず成功させなければならない。でなければ、一年以上必死にともに働いてきた部下たちに面目が立たない。それに、俺はまだ入社して一年程度の彼らに仕事がうまくいったときの充実感というものを味わせていない。あれは、ぜひ味わってほしいものなのだ。学生は確かに楽しかっただろう。だが、社会人もなかなかに楽しいものだということを知ってほしいのだ。
俺はプレゼンの資料とデータの入った大切なアタッシュケースを胸に抱え、会社までの残り一キロを必死にかけている。パソコン作業や話し合いの多い仕事だ。運動不足がたたっているのだろう。激しい息切れに襲われている。足だって見事に笑ってしまっている。俺自身も通行人に笑われている。おかしかろう。まるでかの世界的有名キャラクターのように全身が金色に光っているのだ。そのうえ、そんなやつが汗だくで必死こいて走っているのだ。どうせ何かに覚醒したのなら、飛べりゃよかったんだ。プレゼンのことかー、などと言えば飛べるだろうか。
意味不明な思考をしているうちに俺は目的地にたどり着いていた。できれば降り立ちたかった。
汗だくでビチョビチョ。疲労で足はブルブル。全身はキンキラ。
顔なじみの受付の子が目を見開くのも無理はない。だが、俺にはその説明をしている暇もない。きっと、今頃、彼らは不安で青い顔をしている。そして、上司どもはおかんむりで赤い顔をしているだろう。なにしろ、理由がこれだ。はやく、本当に真実だと伝えなければならない。そんな中で俺は金色の顔をしているのだが。
滴り落ちる汗も光を放っている。いつもの二十一階に昇るエレベーターでその事実に改めて俺は驚く。光る箱はぐんぐんと昇り続ける。
ドアが開いた途端、一斉にこちらを見た部下、上司は無言になった。きっと、今の今まで言い争っていたんだろう。なんで、お前らのリーダーは来ないのか、と。部下も上司も妖怪にでもあったかのような反応だ。失礼な話だ。少なくとも俺は人間なはずだ。自信を持って言い切れないが。
「連絡を差し上げたとおりの理由です。遅れてすみませんでした。すぐに準備いたしますので、部下たちを責めないでください」
釈明すべきはそこじゃないだろうが、知ったことか。
大急ぎだったが、準備は無事に終わった。準備、は。
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