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どうやら、この光、感情の動きに敏感に反応するらしい。よくよく考えてみれば最初からそうだった。苛立ったときや恥ずかしかったとき、焦った時など輝きは増した。照れた時が一番顕著だったように思う。点滅信号さながらだった。あとは、かのキャラクターのように雄叫びをあげると輝きが格段に上昇した。特にそれで身体能力が上昇したわけではなかったが、これには素直に感心せざるを得なかった。彼らは効率よく覚醒していたのだなと実感することができた。俺はこれに関しては自慢したくて仕方がない。少なくとも、作者を含めて実際にやってみることができた奴は世界で俺ただ一人のはずだ。昔、よく読んだ漫画だ。子供の時にあこがれ、どうにかして自分たちもなれないものかと友達とよく試したものだった。やったぞ、友よ。俺は実現させたぜ。
これはまあ、いいことだったのだろう。
現実は当然、初日のように甘くなかった。
今、俺がパトカーに乗っていることのもそれが所以だ。
突如としておっさんが輝きだしたのだ。マスコミが目をつけないわけがなかった。初日、深く考えず会社に向かってしまった俺の足跡は当然残った。どうやら、俺が通ったところでところどころ残像が残ってしまったらしい。十五分程度は残っていたようだ。警察情報と俺の記憶から推測するに、感情が高ぶったところによく残る傾向があるようだ。それはつまり、俺の家の前にも俺がいなくなったあとに俺が居続けたことを意味する。空に向かってお天道様が二つになりましたやらなんやら叫んでしまったときの姿だったらしい。反論の余地なく不審者兼変態だ。
マスコミというものは恐ろしい。そのわずかに残った残像を追いかけて俺の家を割り当てたらしかった。その速さたるものや、刑事に転職することをおすすめしたくなるほどであった。多すぎてこの地域の刑事が飽和してしまうほどだった。飽和刑事量を超えたらマスコミになるのだろうか。そう考えた方がむしろ腑に落ちる。
俺は今、仰々しく護送されている。建設会社のしがない部長だったはずだ。二週間で大した出世だ。テレビ中継はされるわ、明日の朝刊一面確定だわ、大忙しだ。プロジェクターの光を浴びていたころが懐かしい。
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