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今、理紫を帰したら、きっと駄目…。
海月がギュッと抱き付く力を強めると、躊躇いがちに理紫が海月の髪に触れた。
上目使いに、顔を上げると理紫が困った表情(かお)をする。
そんな表情をさせたいわけじゃないの…。
海月は、自分が映っている理紫の瞳を見つめながら、
「側にいて…」と、言うと睫毛を揺らして、その瞳を閉じた。
し…んとした室内に、コクリと理紫の息を飲む音が聞こえる。
「全く…」
理紫は大きなため息をつくと、身体を反転させて海月の顔を両手で挟んだ。
「一体、その手練手管はどこで覚えてきたの?」
「違っ…!」
思わず瞳を開くと、理紫がいつもの悪戯めいた瞳で海月を見つめていた。
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