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もしかして、聞かなきゃ良かった?
「今すぐここでヤっちまうぞ、ってね」
艶めいた声で面白そうに言う理紫に、菜花は思い切り脱力する。
「……アンタ、最低」
また声を出して笑う理紫を後目に、菜花は自分のカバンを肩にかけ直す。
「…私はこのまま帰るから、どうぞ思う存分続きして、いちゃついて下さいな」
「悪いな、黒来」
否定もせず、引き留めもしない理紫に菜花は深々とため息をつく。
「…本当に大事にしてよ」
「分かってるって」
けれど、海月を想うその笑顔がとろける程に甘く優しいから、しょうがないなと思ってしまう。
「…海月も全く、ろくでもないのに捕まったもんね」
ドアが閉まる間際、菜花が独り言の様に言うと、
「それも十分、分かってるよ」と後ろから声がした。
背中でカチャリ…と鍵を閉める音が聞こえる。
菜花はもう1度、深くため息をついた。
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