20.

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「そんな事ないよ…」 理紫の香りに包まれていると、とても安心する。 胸がいっぱいになる…。 理紫は片手を後ろにやり、そっとドアを閉めながら、愛し気に旋毛に口付けた。 海月が抱き付く力を強めると、頭上でクスッと笑う声が聞こえる。 「どうしたの?そんなに俺に会いたかった?」 理紫にふざけた口調で言われたけれど、 「うん、すごく会いたかった」 海月の口からは、素直な真剣な言葉が零れるように出てきた。 「海月…?」 理紫はそんな海月に違和感を感じたのか、顎に手をかけて上を向かせて聞いてくる。 「何かあった?」 キラキラと甘く至近距離で微笑まれ、見つめられると、海月は心を見透かされそうな気がして視線を逸らした。 「な…にもないよ?」 「…本当に?」 心臓が色々な意味でトクトクと騒ぎだす。 「本当に、なにも…」 続けようとした『ない』という言葉は、そのまま重ねられた理紫の口唇で吐息と一緒に飲み込まれた…。
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