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車がどんどんスピードを上げていく。
「それは…、どういう意味で、ですか?」
「どういう意味って、そういう意味。でも君らに迷惑を掛けるつもりはないよ。もう2度とみぃちゃんに怖い想いをさせる気もない…」
『本当に悪かったと思ってるんだ』と、自嘲的に笑いながら、桐谷は話を続ける。
「みぃちゃん、初めてウチの店に来てくれた時、自分がどんなだったか覚えてる?」
言われて、海月は思い出す。
あの頃は、理紫から逃げる様に学校を卒業して、思い出す度にツラくて、毎日泣いてばかりいて…。
あの日、海月は《クルーゼ》ではなく、その先にある書店のバイトの面接に向かっていた。
その日は春にしては陽気が暑過ぎて、食事もろくに取れていなかった海月は坂道を登りきった所で具合が悪くなってきた。
フラフラとした足取りで歩いていると、
「…君、大丈夫?」
声を掛けてくれたのが、その時外で掃除をしていた桐谷だった。
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