第6話

23/33
前へ
/39ページ
次へ
けれど、この一癖も二癖もある、どこか浮き世離れした母親に育てられたからこそ、ああいう子が出来るのだと理紫は妙に納得する。 守られて…、愛されて…。 「…陽子さんのお陰ですね」 「サトくん?」 ただでさえ、普通の母親よりも若いけれど、首を傾げる姿はどこか少女のようだ。 「大事な海月を俺にくれて、ありがとうございます」 装ったものではなく、理紫は自分の言葉で陽子に伝える。 陽子の瞳が大きくなるのが分かった。 「それなのに…」 「……?」 「それなのに、必ず幸せにするとは俺にはまだ言えません。でも、…俺は海月がいないと幸せになれないんです」 俺は何を言い出しているんだろう。 微笑えてはいるが、何故だか肺の奥が軋むように痛んで苦しい。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2923人が本棚に入れています
本棚に追加