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「咲ちゃん、
ちょっとごめん」
女が俺の方に気を取られたのを良いことに、
待ってましたとばかり神崎は酔いつぶれる女を優しく揺さぶり、
俺の方に行くように促す。
咲ちゃん……?
神崎の口から出た名前に俺の動きが止まる。
――聞き覚えのある名前だったのだ。
半信半疑で酔い潰れ、
うつ伏せ気味の女の顔を覗き込んでみた。
「あ……」
女の顔を確認し思わず声が漏れる。
「これ彼女の水……といつものヤツ」
驚く俺に神崎はニヤニヤと笑いながら、
水の入ったグラスと
いつも俺が頼む酒を差し出してきた。
神崎の態度にカチンときた俺は抗議しようと思ったが、
不意に感じた肩の温かい重みが俺と言葉を止めた。
ゆっくり目線を移す。
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