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驚いたことに
彼女の目には涙が溢れていて、
答えに困る俺を見たまま
徐々に顔を歪ませてゆく。
そして俺の胸に顔を押しつけるように埋め
子供のように声を上げて泣き出してしまった。
静かな店内に彼女の泣き声が響き、
一気に周りの客の注目を浴びてしまうことになる。
「おいっ……」
俺は周りを気にしながら彼女に声をかけるが、
彼女は泣くばかりで
俺の話には耳を傾けようとはしない。
さすがにこんな風に泣かれては
怒鳴るわけにはいかず、
どうにか宥めようとするが
一向に泣き止む気配はなく、
それどころかしゃくり上げ
俺のシャツに涙のシミを作っていった。
困り果てた俺は
神崎に助けるように視線を送る。
でも神崎は急に増えてきた客の相手に忙しそうで
それどころではなさそうだった。
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