婚姻届

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でも彼女は落ちかかったマスカラを気になるらしく、 しきりに目元を指で触りだす。 そんな彼女の仕草が可愛くて しばらく見ていたが、 俺は神崎から新しいおしぼりを貰い 「拭いてやるから目を瞑って」 と言うと、 彼女は躊躇いながらもゆっくりと目を閉じた。 あまりに素直な彼女の反応がなぜか嬉しく、 マスカラが落ちても暫く無駄に拭いてしまった。 ゴホンッ 不意に神崎のわざとらしい咳払いが聞こえ我に返ると、 ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら 俺を見ている神崎と目が合う。 俺は彼女に見とれてしまったことを気づかれ、 バツ悪く思いながら手を止めた。 「とれたから……」 そう言うと彼女はゆっくりと目を開け 「ありがとう」 と少し恥ずかしそうに笑い、 そして「もう大丈夫だから」 と彼女は軽めのカクテルを頼み飲みだした。
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