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絶妙なタイミングに置かれたお酒に驚き、
顔を上げると俺の様子を明らかに楽しんでいるような笑みを浮かべた神崎がこちらを見ていた。
まるですべてを見透かされているようで、
敗北感を感じたが、
それよりも俺に身を寄せる彼女が気になってしまった。
少し記憶を思い起こしてみた。
やっぱり記憶がないのは腑に落ちないと思う反面、
あんな飲み方をしていたから仕方ないような気がすると思ってしまう自分もいる。
多少は記憶が抜けている分にはいいが、
ここまで全くないとは思っていなかった俺にとっては、
かなり想定外のことだった。
記憶がないものを今更どうこうできるわけもなく諦めるしかない。
――さて、
どうしたものか。
大切なのは無い記憶をどうにかできないか考えることではなく、
無いなら無いで、
これからどうしたらいいのかを
冷静に考え直すということだ。
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