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今日も会社で親父に言われた言葉を思い出す。
――いつまでもフラフラして子供みたいに反発ばかりして、
早く史貴みたいにちゃんとした相手と結婚して腰を落ち着けろ、
と。
兄貴みたいに?――
冗談じゃない。
何でも親の言いなりの操り人形のアイツみたいには絶対になりたくはなかった。
そう思うと彼女は俺にとっても好都合な相手なのかもしれない。
親父の苦虫を噛み潰したような悔しがる顔が想像できて可笑しかった。
それに少なからず俺は前から彼女に興味を持っていて、
しかも彼女との結婚も悪くはないかもと思い始めている。
顔も知らない好きでもない親父の希望の女と結婚するくらいならいっそ、
このまま判を押して彼女との婚姻を成立させたほうが断然マシだ。
酔っぱらい相手にズルいとは思ったが、
俺に声を掛けた彼女が悪い……。
「早く―!」
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