期限

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チクタク、 チクタク…… チクタク、 チクタク…… 静まり返った部屋に 時計の秒針の音が響く。 目の前にはあるのは婚姻届ではなく、 単なる紙切れに過ぎない。 いくら待っても夢ではなく現実で、 時間が解決してくれるわけもなく 時計の秒針だけが音を刻むだけだった。 「冗談じゃない!  私は知らないからね!」 いつまでもこうしていても 埒が明かないと思い直し、 意を決して男を睨みつけ言い捨てる。 身に覚えがないことを 受け入れることはできるわけがない。 そしてばら撒いたカバンの中身を 雑に放り込むように仕舞う。
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