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そして、第二国語教官室に入ってから初めてものを食べる以外の理由で口を開いた。
「この変態教師めが」
「変態? それもステキー」
私はその気を削ぐために言ったんです。
しかも、現役国語教師がなぜ受け持ち生徒からこんなこと言われなければならないのでしょう。
いい加減にして欲しい。このバカは。
「ああー、早くお前と結婚してラブラブいちゃいちゃしたいなぁ」
どう見ても嫌がってる本人目の前にして、どうしてここまで言えるのか不思議でならない。
私は生徒で妹で、つい先日十五になったばかりのコムスメでしかないのに。
「ね、ちゅーしよ。今俺すっげしたくなった!!」
「…そんなにしたいの?」
「したいです!二十三歳独身高校教師です。よろしくお願いします!」
兄は頭を下げる。握手を求め、片手を差し出す。
バカじゃないの。こんなバカほんと見たことない。
「絶対に、イ、ヤ」
「ええー、なんでぇ、俺の妹はケチンボだぁ」
ケチとか太っ腹とかそういう問題じゃない。人としてどうかという次元の話だ。
姓は異なり、住所も違うといっても、私たちはれっきとした兄妹。
義理のというわけでもない。正真正銘同じ男と女から生まれている。
「俺はお前を愛してるんだよぅ。お兄ちゃんとちゅーしようよぉ。いいじゃん、減るもんじゃないんだしぃ」
私は空になった弁当箱を兄の方に押し返す。
それから机に手をついて立ち上がった。第二国語教官室の出口の扉へ向かう。
「減ります」
このように、兄による手作りランチのご相伴に預からなくてはならなくなったのには、わけがある。
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