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「それよりパリス、舌噛むなよ」
「えっ?」
その瞬間、樹利はハンドルを切って反対車線に入った。
「じゅ、樹利、反対車線!逆走になる!」
「大丈夫、逆走はしねーから」
そう言って助手席のシートに手を当てて、後ろを振り返りバック走行した。
「確かに逆走はしてないけど!」
凄まじいスピードでバック走行する黄色のワーゲンに、左右を走る車の運転手達がギョッと目を開いていた。
窓を開けて「すっげー」と声を上げる子供に、母親が「やめなさい」と窘め、
そんな二人に樹利は運転しながらニッコリ笑ってバイバイと手を振ると、母親は「やだ、イケメン」と頬を赤らめた。
「……警察が追って来て、バック走行で逃亡しながら、すごい余裕だね」
「そりゃ、隣にお前がいるからな」
と樹利は笑みを見せた。
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