第1夜 Crazy Moon

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「ど、どうする、パリス」 珍しく目を泳がせる樹利に、 「えっ?」 とパリスが驚いて顔を上げると、 「曲者に曲者って言われたよ」 と樹利は不服そうに口を尖らせた。 「まぁ、気持ちは分かるけどね」 「って、舐めてんのか、ごるらああああ」 「蜂の巣にしてやんぞ」 と凄む組員たちに向かって、樹利はヒョイと何かを投げた。 「え、樹利、何を投げたの?」 「それは勿論、ダイナマイト」 そう言った樹利に、組員たちは自分たちの目の前に投げられたバチバチと火花を散らしている筒状のダイナマイトに、 「うぎゃああああ、逃げろ!」 と慌てて駆け出した。 「ま、導火線が長いから、逃げる時間はあるだろ。だけど破片に気を付けて」 「後ろ手で火をつけてたんだね。さすが抜かりない」 と笑みを浮かべながら後退りして、建物の陰に隠れた。
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