第1夜 Crazy Moon

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――― ――――― ―――――――― 「総本山、総本山って、ホントなんなんだろうな」 すぐ側の木の上で、そう言って肩をすくめた樹利に、 「って、樹利が言い出したくせに」 とパリスは顔を引きつらせた。 「さて、マジで本当に姿を消そう」 「うん、裏側に抜けるのがいいね」 木の上から塀に飛び移って、そのまま外へと出て、見晴らしの良い小高い丘に向かって走った。 そこからたくさんのパトカーの明かりと、今も立ち上ってるダイナマイト爆発後の煙や、連行される信者たちの姿が見えた。 「これで一件落着だね」 「しっかし大変な依頼だったな」 「……松井社長と雇った探偵を殺害したのは教団ってことは分かったけど、僕たちに依頼して来たのは本当に殺された探偵だったのかな」 そう言って難しい表情を浮かべたパリスに、 「……いや、違うみたいだな。 たった今、本当の依頼人からメールが届いたよ」 と樹利は携帯電話をパリスに向かってかざして見せた。
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