第1夜 Crazy Moon

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――― ――――― ―――――――― 【島田組】 新宿一帯を取り仕切る組のごつい看板を前に、パリスは顔を引きつらせた。 「あの人っていうのは……」 「そう、島田のおやっさん(組長)」 そう言って入口に近付くと、スキンヘッドの門番が「ああ?」と目を細めた。 「お兄ちゃんたち、ここに何の用だよ?」 「おやっさんに用があって。 『樹利が来た』って伝えてもらえますかね?」 ニッコリ笑ってそう言う樹利に、 「はぁ、何言ってんだ、てめぇ」 と門番が胸倉をつかみかけたその時、パリスがその腕をしっかりとつかんだ。 「とりあえず取り次いでいただけませんか?」 手首をしっかりとつかんだまま、柔らかく微笑むパリスの姿に門番は「なっ」と目を開いた。 なんて力だ。 こんな細いモデルみたいなあんちゃんなのに。 それにこの迫力はなんだよ? 門番はチッと舌打ちして、携帯電話を手にした。 「すみません、今『樹利』と名乗る男が……」
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