第2夜 魅惑の口付け

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「ねぇ、パリス君はどんな女性が好みなのぉ?」 酔っぱらいつつそう尋ねる客に、パリスはニコリと微笑んだ。 「そうですね。 迷ったり苦しんだりすることがあったとしても、自分の夢や目標に向かってしっかりと前を向いて歩いて行ける。 そんな女性が僕は好きです」 しっかりと視線を合わせてそう言ったパリスに、客は大きく目を見開き、手を小刻みに震わせた。 「わ、私ね……どうしても叶えたい夢があって、その為には手段を選んでられないって、風俗で働くことにしたの。 それはもう崖から飛び降りるような気持ちで始めた仕事だった。 それなのに、最近はその夢のことを忘れて、稼いだお金をここに来て湯水のように使っていたりして……駄目だよね」 身体を震わせる彼女に、 「気付けたんですから、今からでも遅くはないと思いますよ。 どうかすべてにおいて後悔のないように。 人は誰でも間違います。間違いに気付いた時、どう動くかでいくらでもやり直せますから」 とパリスは優しくその背中を撫でた。
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