第2夜 魅惑の口付け

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「……振るって、そもそも付き合ってないよな?」 と、また小首を傾げる樹利に、 「ああ、そうね、ただ何度も肌を重ねただけだものね!」 と桐華は声を上げた。 そう、あれは約半年前。 大きなサングラスをして、私は新宿のバーで飲んでいた。 『もしかしてあれ、女優の桐華じゃない?』 と囁かれた時には、 『嬉しいわ、彼女のファンで似せているの』 なんて答えたりして。 そうだよ、桐華が歌舞伎町に来るわけないよな。 なんて小声も聞こえていた。 確かに女優業をやっていると夜の街といえば銀座や六本木だ。 でも、私は歌舞伎町が好きだった。
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