第3夜 白椿の君

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「改めて、こんなとんでもない依頼を受けてくださりまして」 そう言って身を小さくさせた可愛に、樹利はクスリと笑った。 「カワイイ女の子を抱いて、感謝される仕事なんて男にとっては願ったり叶ったりだろ?」 「そんな……。 見目麗しい樹利様は女性に不自由されていないでしょう? いつもとても素敵な女性をお相手にされているはず。 そんな樹利様にとって、私のような者の相手を16日間も続けてしなければならないなんて、面倒以外の何物でもなかったはず。 ですが嫌な顔をされずに、優しくしてくださってありがとうございます。 美しい樹利様を16日間も独占してしまったなんて、私はとても贅沢者ですね」 恥ずかしそうに告げた可愛に、胸に何かが迫った。 …………可愛。 息苦しさを感じながら、 それでも何も言わずにキスを落とした。 それは少し甘く切ない味がするキスだった。
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