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まるで天国の門の審判のようにダラダラとした白装束を纏った受付担当の信者は、モデルのように見栄えの良い樹利とパリスを見て、怪訝に目を細めた。
「……人を疑うことはなるべくしたくないのですが、信者を装って、この『再生の家』に忍び込んで記事にしようとするジャーナリストが後を絶たないのが現状です。
真の信者は何か大きなキッカケがあってここに訪れるもの。
あなた達の罪の告白をしてください」
胸に手を当ててそう言う彼に、樹利は「はい」と沈痛の面持ちで頷いた。
「……実は俺は新宿のマリーっていうキャバ嬢にハマりまして。
真っ赤なランジェリー姿で豊満な胸を揺すりながら『お注射して?』と誘惑して来る、破廉恥な女でして」
そう話し出した樹利に、パリスと信者はギョッと目を開いた。
「その小悪魔的魅力に何もかも見えなくなって、彼女の言われるままに会社の金を搾取して、貢ぎ続けたんです。
結果、会社もクビになりまして」
そう言う樹利に、
「それはそうでしょうな……」
と信者は呆れたように顔を引きつらせた。
「それでも彼女がいてくれたらそれでいいと思っていました。
そうしたら兄弟のように育ったこの隣の男・パリスも彼女の魅力に取り憑かれて、あろうことか、彼女に『お注射』を!
別の意味で兄弟になってしまったんです!」
強い口調でそう言う樹利に、パリスは額に手を当て、
「そ、それで?」
と信者は食い入るように身を乗り出した。
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