第1夜 Crazy Moon

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「あー、俺の携帯はさっき言ったようにパリスに壊されてないんですよ。だからパリスのだけになりますが」 すかさずそう言った樹利に、パリスはギョッとしつつも『仕方ない』と携帯電話を箱の中に入れた。 「……ええと、現金はこれだけ……ですか?」 財布の中の1300円を見て、躊躇いがちにそう尋ねる信者に、 「あ、はい。全財産っす。クレジットカードは持ってません」 と樹利はそう言って敬礼のポーズを取った。 「……そうですか。 ああ、でもヤマシタ『パン祭り』のポイントカードはありますね。これも預からせて頂きます」 と財布からパンのポイントカードを抜かれ、 「あ、ああ、あと1ポイントでヤマシタのパン皿が!」 とパリスが手を伸ばすものの、 「パリス、俗世を捨てた俺達にお洒落な白い皿なんて必要ないだろ?」 と樹利はニッと笑ってその肩に手を乗せた。
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