第1夜 Crazy Moon

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少しの間のあと、奥の部屋の扉が開いて、真っ赤なワンピースを着た美女と樹利が姿を現した。 完璧な化粧を施した美女よりも、樹利の方が美しく迫力がある。 前ボタンを留めていないワイシャツ姿は、直視できないような色気を放っていた。 「樹利、今日はありがとう」 そう言って唇を差し出す彼女に、 「いやいや、こんな仕事ならいつでも」 樹利はニッと笑って、唇を合わせた。 唇を離すなり、彼女はウットリと目を細め、 「それじゃあ、ボーヤもまたね」 とパリスに向かってヒラヒラと手を振って、事務所を後にした。 「……今のは?」 腕を組みながら睨むように見据えるパリスに、 「んー、今のは依頼主」 と樹利は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してゴクゴクと口に運んだ。 「はっ?依頼主?どんな仕事を?」 「欲求不満を解消してって依頼で」 「って、それでお金を?それじゃあ売春じゃないか。僕はそんな法に触れるような仕事は認めるわけには!」 勢いよく身を乗り出したパリスに、 「そう思ってお金を取らずに無料奉仕したんだ。えらいだろ?」 と樹利は不敵に微笑んで、パリスの顔を覗き込んだ。
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