第1夜 Crazy Moon

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「決まった食材しか使えないなら、それでこれから俺が美味いもの作りますから、いっぱい食べて下さいね」 そう言ってニッコリ笑った樹利に、皆は「おお」と胸に手を当てた。 「ですが、こんな美味しいものを食べてもいいのでしょうか」 戸惑いながら料理を眺める信者たちに、パリスは優しく微笑んだ。 「ここにあるもので知恵を絞って、良いものを作ることになんの罪があるでしょぅか。 美味しいものを食べて幸せな気持ちになれるというのは、とても大切なことだと思いますよ」 その言葉に信者たちは、 「あ、あなたはまるでヴィシュヌ様のようです」 とパリスを見て、膝をついて涙を流した。 「……ヴィシュヌって?」 そう尋ねた樹利に、 「インドの神様だよ。 シヴァと並ぶ最高神だったと思う」 とパリスは簡単に答えた。
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