第1夜 Crazy Moon

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――― ――――― ―――――――― 「はぁ、近くで見ると、思った以上に高いね」 明かりのない漆黒の闇の中、 パリスはそびえたつような塀を見上げながら、感心の息をついた。 「どうしようか、これだけの塀を上るのはロープでもないと不可能だよ。勿論ロープなんてないわけだし。 正規の出入口はガッチリ鍵がかけられているしねぇ」 と振り返ると、無言で着ている修行服を脱ぎ始める樹利の姿があった。 「って、どうして脱いでるわけ?」 ギョッと目を開くパリスに、 「こんなこともあろうかとサラシを巻いて来て良かったよ」 と胸に巻いたサラシをほどき始めた。
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