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広い敷地内を樹利とパリスは足音も立てずに素早く駆け抜けた。
「……だだっ広い敷地に、高い塀に世間から隔離された施設、か。
否が応でも俺達がいた施設を思い出させてくれるよな」
走りながら忌々しげにそう告げた樹利に、パリスは「そうだね」と小さく漏らした。
足音を立てずにこんなに早く駆け抜けられる。
パトカーの追撃をかわせる反射神経も、人よりもずば抜けた身体能力も……
あの施設で植え付けられたこと。
塀に囲まれた特殊な施設で……。
パリスはふと浮かんだ『あの頃』の記憶に、苦い表情を浮かべた。
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