第1夜 Crazy Moon

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ベランダから隣のビルへと飛び移り、非常階段で下へと降りていく。 スーツ姿の男達がベランダに出て、身を乗り出しキョロキョロと辺りを見回していた。 「あれはやっぱり警察かな? 家に勝手に入ってるってことは、もう令状が出てるってこと?」 階段を駆け下りながらそう話すパリスに、 「警察でもそうじゃなくても、勝手に人の部屋に入り込まれているのは、俺達にとって厄介なことには違いねーよ。 くそ、令状じゃなくて令嬢なら喜んで出頭するのに」 「こんな時までバカなことを言ってない」 一階に降りてそのままビル地下の駐車場に向かう。 真っ黄色の丸みを帯びたワーゲンに乗り込みキーを回すも、カリカリカリブスブスブスッと気の抜けた音しか出なかった。 「って、またエンジンかからないの?」 呆れたように目を開くパリスに、 「そういうな、こいつなりがんばってるんだよ」 と樹利はまたキーを回した。
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