第1夜 Crazy Moon

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「やあ、松井高男さん」 ニッコリ笑ってそう言う樹利に、導師はピクリと眉をひそめた。 「お前も潜入スパイだったか。 『インドの総本山から来た』って?笑わせてくれる。 そのインドの総本山とはどこにあるのだね?」 鼻で笑った導師に、パリスは少しムッとして立ち上がった。 「ワーラーナシ―からです」 「わ、わーらー?」 「ウッタル・プラデーシュ州に属するインドの都市ですよ。 古くは『カーシー国』とも称されたヒンズー教の総本山。 私たちは聖なる教えを私利私欲の為に利用するあなた方を許しはしません。 これが神の啓示です」 そう言って鋭い眼差しを見せ、ヒンディー語で何かを語り出したパリスに、導師は大きく目を見開き、側にいた幹部たちは動揺の色を見せた。
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