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ブスンブスンと車が不機嫌な音を立てる中、スーツ姿の男達が地下駐車場に姿を現し、
「おい、いたぞ、あそこだ!」
と声を上げていた。
「って、見付かったよ、樹利がそんなボロ車を買うから」
「そんなこと言うなよ。だってコイツ、かわいいだろ?ワーゲンビートルがたったの12万円だったんだぜ?」
「って、悠長すぎるって!もう車降りて走って逃げよう!」
駆け付ける警察官の姿にパリスが声を上げた瞬間、ブルルンッとエンジンがかかり、樹利はニッと笑った。
「さすが、やる時はやるな、黄坊」
「って、この車、黄坊って名前なの?」
「ああ、黄色いから」
「って、そのまますぎ」
ブオンッと勢いよく地下駐車場を飛び出して道路に出た瞬間、四方八方からファンファンとパトカーが姿を現した。
「おー、すっげぇ、映画みたいだな、パリス」
アクセルを全開にしつつバックミラー越しにパトカーの姿を確認しながら興奮気味に目を輝かせる樹利に、
「って、どうして、この事態でキラキラできるわけ?」
とパリスは額を押さえた。
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