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不快に響く音。
金属同士を強く擦り合わせたかのようなそれは人の神経を逆撫でし、震えさせるに足るような雑音だ。
では、何故それは断続的に響いているのか。
実に血生臭い理由がそこにある。
窓も無い、生活感も無い、敢えて例えるならば学園の理科室のようなただ不気味で薬品の冷え臭い匂いの漂う、それでいて無駄に広い部屋。
引きちぎられた何らかの機材だった物や、ガラスの破片が散乱しているその部屋には、同時に真新しい赤黒い染みや新鮮な肉のような物が床天井壁問わずにへばりついている。
その正体は言わずもがな、と言ったところだろう。
不快な音も、何かを叩き潰すようなそれまでとは違う肉感的な生々しい音を最後に、もう聞こえなくなっている。
「僕は、誰だ?」
ちらりと、光源のほとんど無い部屋の中に、赤く光る2つの光源が現れる。
それは『眼』だった。
人間のそれに形や特徴は間違い無いが、人間の眼はクラゲやホタルのように光ったりしない。
故に、それはもう『人として怪しい物』である。
金属を裂くような音と生々しい音の2つが消え静寂に包まれた部屋をパリッ、パリッとガラスの破片を踏み潰しながら歩く何者かが、闇の中に居る。
確かに『居る』。
もしこの部屋を客観的な視点で見る者がいたとしたら、暗闇で何か二足歩行の動物が動くシルエットが微かに見えただろう。
ただし、それは『人間』の最大の特徴であり。
人間でありながら、人間では有り得ない『それ』はまだ執念深く何かの画面を映す為に光を放つ、床に落ちたパソコンの前に立つ。
光が、シルエットだけだった『それ』をぼんやりとだが、照らす。
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